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絵本の絵

第21回「14ひきのやまいも」いわむらかずお 作・絵/童心社発行 

 

14ひきのやまいも (14ひきのシリーズ)

著者/訳者:いわむら かずお

出版社:童心社( 1984-07-20 )

定価:

Amazon価格:¥ 1,296

単行本 ( 32 ページ )

ISBN-10 : 449400622X

ISBN-13 : 9784494006229



14ひきのねずみのシリーズ。下の娘が好きだったので、我が家にはこのシリーズが結構ある。子どもたちに絵本を読み聞かせることもなくなって、それ以降も新しいシリーズが出ていたけれど、いつのまにか買わなくなってしまった。久しぶりに出してみると、あらためてすてきな絵本だなと思う。

  秋なので、紅葉した木の葉、草、熟したちいさな木の実、野の花、などで画面が黄金いろに輝いている。そろそろ山では、大きな山芋が地中深く眠っているころ。

今日は遠足気分、水筒もって一家総出の山芋掘り。

お母さんとお父さんは大きな背負いかごを背負っている。

大きいいっくんやにっくん、さっちゃんたちはつるはし、くわ、すき、など掘るための道具を肩にかけ。一番ちいさいとっくんも小さなスコップを肩に得意そう。

2番目にちいさいくんちゃんはおばあちゃんに手をつないでもらっている。

途中、つるを伝って桑の実やがまずみの実を採って食べたり、木の株に上ったりして遊ぶ男の子たち。花のにおいを胸いっぱい吸い込む女の子。

いよいよ山イモの太くて長いつるを見つけた。おじいさんとお父さんは、「よし、きっと大きなやまいもがついてるぞ」と品定め。

そのあいだににっくん、ごうくん、ろっくん、なっちゃん、はっくんがつるを上ってむかごをとって、下に落としている。下ではよっちゃん、くんちゃん、とっくんもむかごをひろっている。きょうだいが多いと、自然に役割分担が決まるらしい。一人ひとりの年齢、性格、性別などから日々のくらしのなかで、それぞれの位置や関係性が出来ているんだろうな。

ざっくざっく、力のあるおじいさんとお父さん、いっくんが地面を掘り起こし始めた。

落ち葉の下にいたテントウムシ、ハサミムシたちが慌てて逃げるところまで描かれていて、いわむらさんの自然を見る目のやさしさが感じられる。

だいぶ掘り進んだ穴へ、おっとっと・・・ろっくんがころがり落ちた。

ろっくんは、どうやらいつも間が抜けているキャラだ。おっとりして、人がいいんだろうな。

大きい兄姉が手伝っているあいだ、ちいさいとっくんとくんちゃんは、土のトンネルをつくって遊んでいる。中から毛虫が顔を出しているのもご愛嬌。

穴に落ちたろっくんを助け出すいっくんとにっくん。みんな心配そうに見ている。

またまた穴掘りの再開。掘った土を引き上げて外に出す者たち。穴の中で掘り出す作業をする者たち。小さい子の面倒をみるおばあちゃん。

山芋が姿をあらわしたところで、さあ山芋のしっぽにつなをつけて、みんなで力を合わせてつなひきだ。

全員の体重を合わせたくらいの大きな山芋を引き上げ、大収穫に喜ぶねずみの一家。

食卓を囲むにぎやかな大家族の風景でこの絵本は終わっている。

家族みんなが一緒にその場にいて、だれひとり欠けることなく重要人物になっている。

ひとりひとりの表情、目のやさしさ。豊かな自然に囲まれた、おだやかでしあわせな家族のくらしが、しみこむように心に入ってくる。(「14ひきのひっこし」では、危険なめにあいながら力を合わせ、安住の地を求めて大移動する家族のよすが描かれている。)

ねずみを擬人化しているからだろうか、人間のようになまなましい葛藤や苦悩が感じられない。ただただ懐かしくて温かい気持ちになる。

こんなふうにだれにとっても居心地のいい居場所になるような大家族が、今でもどこかにあるのだろうか?

戦後、核家族化が進んだと言われるけれど、今日本で一番多いのは単身世帯なのだそう。人と人のつながりがますます希薄になってきている。

うちの家族も核家族なので、子どもたちにとって祖父母は「時々会うとかわいがってくれるやさしい人たち」なんだろう。

この絵本を見て、祖父母、父母、自分という三世代の命のつながりをなんとなく感じてくれるのではないかと思う。

今の格差社会も競争主義も「勝ち組、負け組」も関係のない、こんなくらしがきっとできるはずだとも思う。それは、単に「昔はよかった」という懐古趣味ではなく、既存の価値観から解放されて自分なりの価値観や生き方を求めるところから新たにつながった人間関係なんだと思う。血縁関係をこえた家族なのかもしれない。

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